ファンダメンタルズ&経済の基礎知識(15)中央銀行の役割
2023/08/25
中央銀行の意義と役割
一国や、EUなどの地域の経済政策は、主に政府と中央銀行が立案・遂行しています。当然ながら、政府と中央銀行が担う経済政策はその国や地域のファンダメンタルズに大きな影響を及ぼします。そこでここからは中央銀行の意義と役割について少し説明しておきたいと思います。
中央銀行とは、日本の日本銀行(日銀)や米国のFRS(米連邦準備制度)など、一国の金融機関の中枢的地位を占める銀行を指します。中央銀行には、いくつかの側面があります。ここでは、日本銀行の例で見ていきますが、各国の中央銀行もほぼ同様の機能を果たしています。
(1)銀行の銀行
日本銀行は、民間銀行との当座預金の取引を通じて、各銀行名義の当座預金の受け払いを行っています。つまり、私たち個人や企業が銀行と行うような預金の受け払いを、各銀行は日本銀行を相手に行っているということです。
(3)政府の銀行
日本銀行は、金融政策を通じて、物価のコントロール、通貨価値の安定、金融システムの維持などを行っています。金融政策については、毎月の日銀金融政策決定会合で話し合われます。
また政府は日本銀行に預金口座を持っていて、その口座に徴収された税金を入金したり、公共事業のための資金を引き出したりしています。そのため、日本銀行は「政府の銀行」とも呼ばれています。それに加えて、外貨準備高 の管理なども、日本銀行の役割です。
(3)発券銀行
日本銀行は日本銀行券(円紙幣)を発行する発券銀行の役割を担っています。具体的には、独立行政法人造幣局が製造して、日本銀行へ交付する形がとられています。
(4)為替介入(外国為替に関する市場介入)
日本銀行のもう一つの役割に為替介入があります。これは、円の相場が急激に上昇したり、あるいは急激に下落した場合などに、日本経済に重大な悪影響が及ぶと判断すれば、日本銀行が財務省より指示を受けて、外国為替市場で円売りや円買いを行うことです。
ちなみに2003年~2004年ごろに過度な円高になったことがありました。それを懸念した政府と日銀(政府日銀)は、当時頻繁に為替介入(円売り介入)を行いました。当時、日本の景気にようやく回復の兆しが見え始めたころで、GDP (国内総生産)で良好な数値が出たりすると、今後の景気回復期待から、円が投機的なものも含めて大量に買われることが多くなってきたのです。そこで急激な円高は日本の輸出産業に悪影響を及ぼすため、政府日銀が円売り介入を頻繁に行っていたというわけです。
また今、2023年夏の円水準は、近年最低と言われるほど円安に振れています。そのため円安が加速した際には、政府日銀が円買い介入を行うのではないかという憶測が流れることが増えました。
ただし、頻繁な為替介入は国家のエゴとして世界から非難されることもあり、最近は、よほど急激な為替変動が起きない限り、政府日銀は介入に基本的には慎重な姿勢をとっているようです。